節税(法人税)

概要ではありますが、以下に例を示します。(所得税の節税と重複する部分があります。)
なお法人税法上認められる経費を損金といいます。収入は益金です。

また青色申告の承認を受けていることを前提にしています。

資産に関するもの

売掛金等

売掛金や貸付金が回収できなくなった場合は、貸倒損失として損金に算入できます。

しかし一定の要件を満たす必要があり、証拠となる書類もとっておくことになります。

・法的基準・・・債権の消滅が法的に認められる場合
・実質基準・・・実質的に全額が回収不能な場合
・形式基準・・・売掛債権について取引停止後1年以上回収できていない場合等

また上記の貸倒損失に備えて、事前に一定の損失の見積額を損金に計上できます。

これを貸倒引当金といい、債権の数%程度の金額が認められる場合などがあります。

評価方法

期末には在庫を数えて資産に計上することになりますが、その在庫の金額の計算方法(評価方法)は実は複数あります。

この評価方法によっては売上原価の金額が変わってくるので、所得(利益)にも影響があります。

なお在庫の評価方法を変更する場合は事前の申請が必要です。
また同じ評価方法は3年間は継続して適用する必要があります。

含み損を抱えた資産

含み損を抱えた資産を売却すれば、その売却損を損金に計上できます。
もちろんそれでは資産が無くなってしまうので困る場合もあります。

そこで例えばゴルフ会員権であれば、社長に売却することも考えられます。

法人では売却損が計上され、一方で社長はまだゴルフ会員権を所有しているので取引先との接待にも使用できるという目論見です。

しかしこの行為は合理性があるのかを考えなければなりません。
オーナー会社、つまり同族会社は最終的には税務署が非合理的な租税回避行為を否認できるようになっています。

もちろん滅多にそのような制裁を受けることはありませんが、一見法律に従っていても、税金が減れば何をやってもいいということにはならないので、ぜひ覚えておきたい知識です。

結論として、全くの外部へ売却するのであれば問題ありませんが、法人関係者へ売却するような行為は、ある程度の合理性がないと認められない場合もあります。

役員貸付金

役員に対する貸付金は税務署、金融機関共に注目されてしまうので気をつける必要があります。

ひも付き融資以外であれば、4%+日本銀行が定める基準割引率により受取利息を計上しなければならないので、基本的に役員への貸付は避けるべきです。

受取利息を計上していないと役員報酬と認定されてしまう可能性が高く、その役員への源泉所得税の徴収も求められるので課税されてしまいます。

またそもそも役員への貸付けは取締役会での承認も必要です。

短期前払費用

翌年1年分の前払い家賃や損害保険料は、その支払った年の損金に算入できます。

ただし翌々年以後の分も含めて支払っているときは算入できません。
またこの処理は毎年継続する必要があります。

さらに継続的な役務の提供を受ける契約をしているものに限るので、物品を購入する場合には適用できません。

少額減価償却資産

建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産はいきなり全額を損金に算入にすることができません。
何年かに渡って経費化する処理をしていきます。

この資産を減価償却資産といいます。
また減価償却資産を経費にする処理を減価償却といいます。

しかし少額の減価償却資産については、短期間で損金に算入できる例外の規定があります。

・10万円未満の減価償却資産・・・購入し使用した年に全額が損金になります。
・10万円以上20万円未満の減価償却資産・・・購入し使用した年から3年で均等に損金とします。
・10万円以上30万円未満の減価償却資産・・・購入し使用した年に全額が損金になります。(合計300万円まで。期間限定の特例です。)

中古資産

中古の減価償却資産であれば、損金に計上する期間が短くなります。
最短で2年です。

ただし月割りをするので期首に購入した方が効果が高いです。

固定資産の修繕

減価償却資産を修理した場合、純粋な修理であれば全額が損金に算入されます。

しかし価値が増したり使用できる期間が延びる場合は、減価償却資産として減価償却の対象になります。

なお20万円未満の修繕費は、内容を問わず簡便的に全額を損金とすることができます。
その他にも全額損金とできる場合があります。

固定資産に算入しない費用

原則として固定資産の取得のためにかかった経費は固定資産の取得価額に加算します。

よって損金算入できませんが、不動産取得税、自動車取得税、登録免許税、登記費用などは損金算入が認められています。

税抜き経理

特例などで何円未満であれば損金に算入できる、などの規定がありますが、消費税を含めて判断するのかどうかは経理の処理方法によります。

税込みで記帳している場合は税込みで判断し、税抜きで記帳している場合は税抜きで判断します。

よって税抜きで記帳すれば判断の基準が下がるので、一般的には税抜きによる方法が採られています。

なお消費税の免税事業者は税込みで記帳するしかありません。

負債に関するもの

未払費用

期末時点で支払っていない費用は未払費用として損金に計上できます。

例えば従業員の給与で、20日締めの25日払いという規則となっているとします。
この場合は21日からその月の末日までの期間分について、日割りで給与を計上できます。

また社会保険の未払い分を計上していないケースがよくあるので、これも忘れずに計上すれば損金算入されます。

ちなみに役員の報酬は日割りという概念がなく、税務上も認められないので気をつける必要があります。

決算賞与

当期は業績がよかったので、従業員に利益を還元しようとして決算賞与を支給する場合もあります。

そこで決算賞与を決算日直前に慌てて計上することも考えられますが、そのためには決算日前に支給額を通知し、決算日後1ヶ月以内に支給をしなければなりません。

大前提として決算書に計上することも必要ですし、決算日を過ぎてからでは間に合わないので事前の計画が大切です。

もちろん決算日前に支払うことができれば何の問題もないので、できればそうすべきでしょう。

固定資産税

固定資産に課税される固定資産税は役所から送付されてくる通知書に従って納税します。

しかし来年の納期の分であっても通知された年に全額を損金に算入できます。

売上に関するもの

延払基準

例えば通販などで、分割払いで商品を購入することがあります。

しかし逆に考えて、販売している法人側も、売上を分割して計上することができます。

一定の基準はありますが、この方法であれば代金の回収に応じて売上が計上されるので、資金的にも適正な運営ができます。

なお原価の計上も売上に合わせます。
その他役務の提供、一定の工事などにも適用できます。

締め後

売上について、本来であれば決算月の末日分まで計上しなければなりません。

しかし例えば20日締めの取引を行なっており、20日で決算計上を締める会計処理を継続して行なっている場合は、税務上もその程度であれば認めることになっています。

ただ会計のルールから考えると不適切な方法なので、特に金融機関に決算書を見せることを想定した場合には、売上の計上基準があいまいになってしまうので注意が必要です。

費用に関するもの

役員報酬

役員報酬が損金に計上されるためには、毎月同じ金額を同じ時期に支給する必要があります。

非常に融通が利かないので、事前の計画が大切です。

決算後の株主総会等で支給額を変更することはできますが、期中に変更する場合はかなりの業績悪化がある、又は明らかに業績悪化が見込まれるなどの特別な理由が必要です。

また法人の実態から考えて多すぎる金額も認められないため、注意しなければなりません。

役員賞与

役員賞与を損金に計上するためには、事前に税務署へ届出書の提出が必要となります。

さらにその届け出た金額を届出通りの時期に支給する必要があります。

ここが非常に使い勝手が悪い部分であり、現実的に考えれば賞与については役員報酬に含めて毎月一定額を支給した方が都合がいいでしょう。

役員報酬は支給が遅れても、その事業年度内に支給していれば認められるからです。

役員退職金

本来退職金は会社を去るときに支給されるものです。

しかし例えば代表取締役が非常勤役員になり報酬も半分以下になれば、分掌変更ということで退職金の支給が認められます。

ただし議事録など形式的な資料も必要ですが、その他影響力などを総合的に考慮し実質的に支配が続いていれば認められないので注意が必要です。

身内を従業員にする場合

身内を従業員にする場合は、みなし役員という規程に注意する必要があります。
登記上は役員になっていなくても、税務上は役員と同じ扱いを受けてしまう場合があります。

例えばその法人の株式を一定数もっている場合等が該当します。
今期は利益が出たから一般従業員である息子に多額のボーナスを支給しよう、と考えても結果的に認められないケースがあります。

このみなし役員は事前に分かるので、あらかじめ警戒しておくことが大切です。
また使用人兼務役員という地位もありますが、この場合もみなし役員とされてしまう可能性があるので気をつける必要があります。

逆に考えれば、みなし役員にならないようにすれば、ボーナスの支給や期中での給与の増減も、一般従業員と同じような方法を採れば問題なく認められます。
ただし高すぎる支給額は認められません。

広告宣伝費

決算間際になって、お金が余っているから税金を払うぐらいなら広告に使ってしまおう、という話しも景気がいいときにはありました。

しかしその広告は決算日までに実際に掲載されていなければ、その期の経費とは言えないので損金算入できません。

特に出版物などはいつ発売されるのかも気にする必要があります。

経営セーフティー共済

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、毎月一定の掛け金を支払い、取引先等が倒産をして売掛金の回収が困難となった場合に、掛け金の10倍(最大8,000万円)の範囲で融資が受けられる制度です。

掛け金は全額が損金算入され、一定期間後には全額を戻すこともできるので、非常にお得な制度です。

ただし解約して戻ってきたお金は益金に算入されてしまうので、修繕費など多額の支出があるタイミングを図って解約する必要があります。

中退共

中小企業退職金共済制度(中退金制度)は、毎月一定の掛け金を支払い、従業員が退職したら中退共からその従業員に直接退職金が支給される退職金の共済制度です。

従業員が突然退職した場合の退職金資金の心配をする必要がなく、掛け金は全額が必要経費に算入されるので、検討する価値が非常にあると言えます。

また国から数ヶ月間、一定額を補助してもらえるお得な補助制度もあります。

リース料

リース取引については節税というより紛らわしい部分があるので、概要ですが触れておきます。

なお土地に関するもの、セールアンドリースバック、リース資産を貸した側の処理は省きます。

<平成20年4月1日以後契約のリース取引の分類と処理>

 

金額基準

 

 

所有権基準

 

 

処理

 

 

簡便的処理

 売買とみなされるリース
(原則資産計上)
 所有権が移転しないもの  リース期間定額法  支払金額を損金
(資産計上しない)
 所有権が移転するもの  通常の減価償却
 その他のリース  所有権が移転しないもの  支払金額を損金  なし

<売買とみなされるリースとは>
解約不能、支払い総額などの条件から金銭的に購入と変わらないリース取引をいいます。

<所有権が移転するものとは>
譲渡条件付き、割安購入選択権付きのリース取引などをいいます。
その他格安の再リース料で再リースができることがあらかじめ判明しているもの等、実質的に所有権が移転するものと同様のものが該当します。(※実質で判断します。)

これに該当しなければ、所有権が移転しないものとなります。

<条文を読む場合のリース資産の意義>
売買とみなされるリース取引により取得した資産はリース資産となりますが、減価償却の計算方法に限り、所有権が移転しないものだけがリース資産と定義されており、リース資産が2つ定義されていて間違えやすいので注意が必要です。

<リース資産計上の際の取得価額>
リース料総額となります。ただし利息分が明確に区分できれば、その利息分を除くことができます。

<簡便的処理について>
支払金額を損金に計上した場合は償却費として取り扱われます。
支払金額とリース期間定額法による償却費は同じ金額になる可能性があり、その場合は減価償却の処理は必要なく、明細書の添付も不要です。

<消費税について>
取引開始時に一括して仕入税額控除をする方法が原則です。
しかし簡便的処理をした場合は、分割控除が認められています。
(参考)国税庁ホームページ

消耗品

期末に消耗品を一度に購入して何とか経費にしようと考えることがあるかもしれません。

しかし期末時点で実際に使用していない消耗品は貯蔵品として資産に計上しなければなりません。

ただし継続的に一定量を購入して使用している場合は、簡便的に未使用分があっても消耗品として損金算入されます。

なお切手や収入印紙は実際に使用した分のみ損金に算入されます。
簡便的な処理は認められていません。

自宅を登記

社長の自宅を会社の本店として登記している場合もありますが、この場合は明らかに使用している部分が判明できれば、社長に対して家賃を支給することができます。

金額はその建物の減価償却相当額に床面積割合を乗じるなどして、ある程度合理性をもたせた方がいいでしょう。

社葬

例えば法人の代表者などが亡くなられた場合に社葬を行うこともありますが、相当と認められるものは損金に算入できます。

ポイントは以下の通りです。
・認められない社葬・・・会社への貢献度、地位などから不適切な社葬と考えられるもの
・前提条件・・・取締役会の議事録が必要、当然領収書なども必要
・認められる経費・・・葬儀に直接かかる経費(会場使用料、読経料、粗品代等)
・認められない経費・・・葬儀に直接関連しない経費(四十九日費用、戒名料、香典返し等)
※精進落とし等食事の経費は会社関係者分は交際費となります。
・香典・・・遺族の収入としてよい(遺族側も非課税)
・弔慰金・・・業務上の死亡は給与3年分、業務外の死亡は給与半年分が相続税の非課税限度額

創立費

法人を設立するための登記費用などは、創立費として資産計上されます。

これを繰延資産といいますが、創立費はいつ損金として償却(計上)してもかまいません。

設立から何年も経ってから償却してもいいことになります。

金額も任意に決められます。
ただし会計基準との整合性は考慮する必要があります。

開業費

法人を設立してから開業するまでの費用で、特別に支出したものは開業費として資産計上されます。

これも繰延資産となり、いつ損金として償却してもかまいません。
ただし会計基準との整合性は考慮する必要があります。
※法人成りの場合などは開業費になりません。

特別に支出した費用とは、市場調査費用や広告宣伝費、交際接待費、所轄行政官庁への許認可に関する費用などが該当します。

設立前の費用

法人の設立前であっても、家賃、水道光熱費、人件費などの経常的な支出がかかることがあります。

このような費用は設立第1期の計算対象となります。

なお減価償却資産は事業に使用した時から減価償却をします。(月割り計上)

今までの設立に関する費用をまとめると以下の通りとなります。

 

費用の種類

 

 

設立前

 

設立第1期

 

 開業準備中 開業
 設立登記関連費用等  創立費
 特別な支出 開業費  設立第1期の計算対象
 経常的な支出 設立第1期の計算対象

※計算対象とは損金算入の可能性があるという趣旨です。
内容によっては法人税法により損金不算入となる場合もあります。

税額控除等

一定の資産を取得した場合等に税額控除等の特例があります。

なお前提として、中古品の取得には適用がありません。
またリースでも適用がある場合があります。

生産性が向上する設備等を取得した場合

一定の生産性が向上する設備等を取得した場合は、最大でその取得価額の5%分の税額控除又は全額を償却することができる措置を受けられます。
(納品が平成26年1月20日以降のもの 限度額あり、繰越控除なし。)

ただし証明書等を確定申告書に添付する必要があります。
(参考)経済産業省ホームページ

機械等を取得した場合

一定の中小企業等が機械等を取得した場合は、その取得金額の7%分の税額控除が受けられます。(限度額あり。1年の繰越控除あり。)

機械等とは、
・1つ160万円以上の機械や装置
・試験、測定機器で合計額が120万円以上のもの
・パソコンで合計額が120万円以上のもの
・デジタル複合機(インターネットFAX機能が有効な状態にしてあるもの等)で合計額が120万円以上のもの
・一定のソフトウェアで合計額が70万円以上のもの
・3.5トン以上の貨物自動車(車検証では普通自動車扱いのもの)

などが該当します。

なお特別償却を選択できる場合もあります。

※上記の生産性向上設備を取得した場合の優遇税制を、この中小企業者等が機械等を取得した場合の優遇税制により受けられるようになりました。(上乗せ措置)

違いは設備等が若干緩和され、控除税率が10%に拡大されていることが特徴です。

生産等設備を取得した場合

主に製造業の工場などで使用される生産等設備を一定基準以上取得した場合に、その生産等設備のうち機械装置について、投資額の3%の税額控除が受けられます。(限度額あり。繰越控除なし。)

なお中小企業以外でも適用があります。

店舗のリフォーム等をした場合

一定の中小企業等が店舗のリフォーム等をして一定の投資をした場合は、その投資額の7%分の税額控除が受けられます。(限度額あり。1年の繰越控除あり。)

ただし認定機関から経営改善に関する指導及び助言を受けた場合に限ります。

一定の投資とは、
・1つ30万円以上の器具備品
・1つ60万円以上の建物附属設備
の取得が該当します。
(参考)パンフレット

グリーン投資をした場合

中小企業者等がグリーン投資をした場合は、その投資額の7%分の税額控除が受けられます。(限度額あり。1年の繰越控除あり。)

グリーン投資とは、
・電気自動車
・プラグインハイブリッド自動車
・エネルギー回生型ハイブリッド自動車
・太陽光発電設備(一定のもの)
などの取得が該当します。
ただし補助金を受けて取得したものは対象外です。

なお中小企業者等以外は特別償却のみの適用となります。
その他一定の要件があります。
(参考)資源エネルギー庁ホームページ

雇用者の数が増加した場合

中小企業であれば、雇用者(雇用保険の一般被保険者)が2人以上増加し、その増加割合が10%以上になれば、増加数×40万円分の税額控除が受けられます。(限度額あり。繰越控除なし。)

ただしハローワークに雇用促進計画を提出する必要があり、また身内の雇用は対象になりません。
なお中小企業以外でも適用があります。
(参考)企業向けパンフレット

雇用者の給与が増加した場合

雇用者(賃金台帳に記載される者)の給与が一定基準以上に増加した場合、増加額の10%分の税額控除が受けられます。(限度額あり。繰越控除なし。)

なお上記の雇用者の数が増加した場合の特例との選択になります。
よって期首に、雇用者の数が増加した場合の特例を受けるための雇用促進計画を、とりあえずハローワークに提出しておき、申告時に選択するという方法も考えられます。

また役員とその身内の給与は対象になりません。
(参考)経済産業省ホームページ

その他

その他試験研究費の特別控除等の特例があります。

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