会社設立のメリット

個人で事業を行う場合と会社を設立して事業を行う場合のメリット・デメリット等の概要を解説します。

なお会社と言えば株式会社が一般的であり、信用も得られやすいので株式会社を前提としています。(有限会社は設立できなくなっています。)

 

はじめに結論を言ってしまえば、法人化はお金や手間がかかりますが、節税や信用力を考えると長期的にはメリットの方がかなり大きいと思います。 

 

また会社設立による節税メリット等は節税(会社設立)をご参照下さい。

メリット

事業年度

法人は事業年度を自由に選択できます。

よって繁忙期を避けて決算期を設定できます。

確定申告期限は決算日後2ヶ月以内です。

 

個人の場合は暦年と決まっていて変更することはできません。

確定申告期限は3月15日です。

法人格

会社を設立すると法人格が与えられます。

法人とは法律上の人という意味です。

 

これによって銀行の口座をはじめ、あらゆる契約を会社の名義で締結することができます。

信用力

法人は登記してある事項で概要が分かります。

例えば資本金や運営者(役員)、事業目的などです。

 

そして登記してある情報は誰でも見ることができるので、個人事業よりも情報がオープンになっています。

 

また一定の不法行為等があった場合は、関係者の申立てにより裁判所が解散を命令することもあります。

 

よって法人は存在しているのだけで、(僅かですが)ある程度は信用できるとも考えられます。

取引制限

大きい企業は、個人事業の方と取引をすることは控える傾向があります。

もし取引をしていたとしても、その金額に制限がある場合があります。

 

そのような事情からも法人の方が信用があると言えます。

資金調達

法人の場合は社長のプライベートのお金と事業のお金を明確に区分して経理をすることが求められるので、お金を貸す側にとっても判断がしやすいと言えます。

 

また出資という仕組みが最大の特徴です。

個人へお金を提供する場合は、あげるか貸すかの2つですが、法人に対しては出資という形でお金を提供することができます。

 

出資をした側はそれを証明する証券(株式)を所有することができ、これを他者に売ることができるので、出資したお金を回収することができます。

ここが個人にはない特徴的な制度で、株式会社は莫大な資金を調達できる可能性があります。

 

ただし上場会社でなければ譲渡に一定の制限を加えることが一般的です。 

助成金

助成金とは国や自治体から支給を受けられる支援金です。

手続きや要件を満たす必要がありますが、返済する必要のない公的資金です。

 

この助成金は個人でも法人でも受けられますが、法人を要件としているものもあります。

また社会保険に加入していることを要件とするものもあります。

 

個人事業は基本的に従業員が5人未満であれば社会保険の加入は任意なので、強制加入である法人の方が結果的に助成金を受けられる種類が多いことになります。

個人資産との区分

例えば会社が倒産したとします。

 

この場合、会社に出資した人は出資したお金(株式)が紙くずになってしまいますが、それ以上の責任を負わされることはありません。

 

また役員個人に対して債務の返済を求めることはできません。

よって会社を設立することにより社長個人の資産を守ることができます。

 

これは法律上、法人と個人は別の人格であると考えているからです。

ただし社長が連帯保証人などになっていれば別なので注意が必要です。

求人

事業を成長させるに当たって、優秀な又は相性のいい従業員を雇うことは重要な経営課題です。

 

やはり個人事業では求人において、法人よりかなり魅力が劣ってしまうことは否めません。

特に正社員の募集であれば、多くの方は株式会社を前提にしていることが現実であると考えられます。

事業承継

個人の方が亡くなられたらまず預金口座の凍結が予想されます。

引き出しには煩雑な手続きがあり、遺産分割協議書などを用意する必要があるので時間がかかることがあります。

 

しかもこの間に取引先が支払いを待ってくれるとは限りません。

さらに事業を引き継がれる方がいたとしても、全ての契約を締結し直す必要があります。

 

しかし法人であれば、社長が亡くなられても資産の所有権は法人にあるので今まで通りの取引ができます。

手続きとしては新しい社長(代表取締役)を登記すればいいのです。

 

実際は株式の相続などもあって大変ですが、事業が滞ることはありません。 

事業譲渡等

たまに企業買収などという話しを聞きますが、法人を売買する場合の手続きは株式の売買契約だけで済みます。

 

法人の資産は全て株式に集約されているからです。

売買といっても大げさなことではなく、自分の子どもに事業を引き継がせることはよくあることです。 

 

これが個人で事業を売却しようとすると、一つ一つの資産について売買を行うことになります。

 

その中に例えば不動産が含まれていれば、登記の報酬、登録免許税、不動産取得税、印紙税といった諸費用を支払うことになります。

 

株式の売買や贈与であれば登録免許税はかかりません。

デメリット

開業・設立の手続き

法人の場合は登記が必要になるので、費用もかかり手続きも煩雑になります。

株式会社でおよそ21~25万円前後で、他にも登記の報酬や印鑑代などもかかります。 

 

個人の場合は登記を必要とせず、最低限の手続きとして税務署に事業開始の届出書を提出するだけで済みます。

経理事務負担

法人は会社法の適用を受けるため、会社法に従った決算書類の作成を求められます。

さらに法人の確定申告書は簡単に作成できるものではないので、普通は税理士に依頼します。 

 

個人の場合は所得税法や消費税法を意識して決算書類を作成することになりますが、簡易な帳簿も認められているので、法人に比べれば負担は少ないと言えます。

確定申告も帳簿をしっかりと作成して税務署に持って行けば何とかなる場合もあります。 

機関設計

法人では必ず取締役(役員)等を設置する必要があります。

法人は人として扱うといっても人間ではないので、必ず人間による統治をすることになっています。

 

この役員の選任等の際には登記をしなければならないので、個人よりも手間がかかると言えます。

ちなみに法人と役員は経営の委任契約を締結している関係になります。

サラリーマンのような雇用関係ではありません。 

 

個人の場合はどのような組織にしても自由に統治ができます。

意思決定

個人事業であれば経営上の意思決定は、全て事業主一人で行うことができます。

 

しかし法人であれば取締役会や株主総会で、例えば過半数の決議を経るといった手続きを必要とします。

そしてその結論や過程などを記した議事録を残しておかなければなりません。

 

この辺りが個人と違って、意思決定がかなり制限される感じがあります。

取締役会を設置しないといった機関設定もできますが、外部からは統治機能を疑われる可能性もあります。

役員の責任

役員は経営を委任されている立場になるので、会社法上一定の責任を負っています。

オーナー企業ではあまり意識されないかもしれませんが、主に次のような責任があります。

 

・株主に対する責任(株主総会等での説明責任、利益相反取引などの損害賠償責任等)

・従業員に対する責任(労働法規を遵守し、マネジメントすることが求められる)

・第三者に対する責任(例えば取引先に損害を与えた場合等)

・社会に対する責任(欠陥商品により事故を招いた場合の辞任等) 

均等割

個人事業では赤字の場合税金はかかりません。

 

しかし法人であれば赤字(課税所得なし)であっても、法人住民税では均等割という地代のようなものを課されます。

 

金額は最低でも7万円(の場合が多い)であり、毎年支払う必要があります。

事業資金の区分

個人事業であれば、事業主は自由にお金を使うことができます。

自分に対する給与はありませんが、預金から好きなだけ出し入れできます。

 

ところが法人とは、法律上人格を持った存在なので、経営を委任されている社長は理由もなく勝手に法人のお金を使うことはできません。

 

もっとも中小企業では株主と社長が同一であることが多いので、株主から訴えられるといったことは少ないかもしれませんが、税務的には私的流用は損金(経費)にならない上、所得税・住民税がかかってきます。

税務調査

一般的に法人の方が税務調査を受けやすいと言われています。

しかしそもそも調査は規模が大きいところをメインに行われます。

 

個人事業でも規模が大きくなってくれば一般的には法人化をするので、その規模が大きい法人が調査を受けることはある意味宿命です。

 

しかし調査があれば従業員も不正をしにくくなるので、かえって牽制ができていいという考え方もあります。

社会保険

個人事業では社会保険(健康保険・厚生年金)の加入は任意の場合があります。

例えば従業員が5人未満の商店や工場などです。

 

しかし法人の場合は強制となっているので必ず加入することになります。

この場合、法人側では従業員の社会保険料の半分を負担する必要があります。

役員であっても加入は義務です。

 

ちなみに労働保険(労災保険・雇用保険)は従業員を雇っていれば個人事業であっても加入する必要があります。

廃業

個人事業を廃業する場合は、財産などの整理は別として、特に登記の手続きは必要ありません。

 

しかし法人の場合は手間とお金もかかります。

まずは解散の登記をし、財産などの整理が終わればそこで精算結了の登記をして廃業手続きが完了します。