節税(福利厚生費等)

以下に掲げる費用は現物給与として、受け取った者が給与の課税をされる可能性があるものです。

 

しかし税務上の基準を満たせば給与とはされず、福利厚生費等として経費に算入されるので節税にもなります。

個人事業主

これより以下に書いてあることは、役員(取締役等)や従業員に対する課税関係です。

よって自分自身が給与を支払う立場にある個人事業主の方には当てはまりません。

 

役員の場合は株主から経営を委任され報酬を受け取る立場にあり、その報酬は所得税法上は給与扱いとなっており、給与をもらう立場にあります。

 

なので役員も従業員も同じような取扱いとなります。

ただし役員の場合は特別な扱いとなる場合もあるので、その都度ご説明します。

役員社宅

役員に対して社宅を提供した場合は、最低でも以下の金額(税務上の適正家賃)を徴収しなければ、徴収不足分が給与扱いとなってしまいます。

 

徴収とは一般的には給与から天引きすることになります。 

またその社宅の一部を業務に使用していれば、その適正家賃の70%が最低徴収額となります。

 住宅の区分

 住宅の形態  

 税務上の適正家賃

   

 一般住宅    

小規模な住宅(賃貸含む)  計算式A

 小規模な住宅以外

 自社所有  計算式B
 賃貸

 家賃(管理費・共益費含む)の50%

 ただしBによる金額が大きければB

豪華住宅       実勢価格(時価)

役員社宅2

上記の表における各用語について補足しておきます。

 

<小規模な住宅>

・建物の耐用年数が30年以下(木造)・・・床面積132㎡以下の住宅

・建物の耐用年数が30年超(木造以外)・・・床面積99㎡以下の住宅

 ※共有部分がある住宅の場合は一定の調整をする

 

<計算式A>

次の(1)から(3)の合計額

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2)12円×(その建物の総床面積/3.3㎡)

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

<計算式B>

次の(1)と(2)の合計額の12分の1

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
   ただし、建物の耐用年数が30年を超える場合には12%ではなく、10%を乗じます。

(2) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 

<豪華住宅>

床面積240㎡を超える住宅など

 

<実勢価格>

賃貸とした場合の価格など

役員社宅3

税務上の適正家賃について補足をしておきます。

 

・社宅は会社所有か、会社と賃貸借契約を締結している住宅に限ります。

 (住宅手当などの金銭支給は給与となります。)

 

・水道光熱費は自分で負担します。

 

・駐車場代は自分で負担します。

 (ただし管理費等に含まれている場合は管理費等として扱います。)

 

・月の途中で入居した場合は、その月の家賃は会社負担でかまいません。

 その他仲介手数料、敷金礼金なども会社が負担しても給与とはなりません。

 

・固定資産税の課税標準額等は自社所有でなく賃貸物件であっても閲覧し、証明書の交付を受けることができます。

 手続きは市役所等でご確認下さい。 

 

・固定資産税の課税標準額の改訂があった場合は、第1期の納期限の翌月から税務上の適正家賃を再計算する必要があります。

 

その他単身赴任の場合、プール計算など特殊な計算もあります。 

従業員社宅

従業員に対して社宅を提供する場合の税務上の適正家賃は、上記計算式Aの50%の金額となります。

 

最低でもこの金額を徴収しなければ、徴収不足分は給与扱いとなってしまいます。

徴収とは一般的に給与からの天引きとなりますが、従業員であれば労使協定の締結が必要となってきます。

 

なお従業員自身が住む住宅を選択できたり指定することは、事業者が提供する福利厚生の限度を超えていると考えて給与扱いとなります。

住宅は事業者が選択して供給するのが一般的な福利厚生です。 

 

その他の補足事項は上記役員社宅3と同じ取扱いとなります。

ただし固定資産税の課税標準額の再計算については、従業員社宅の場合は課税標準額の変動が20%以内であれば行う必要はありません。(任意で再計算するのはかまいません。)

 

従業員社宅2

例えばホテルに住込みで勤務している場合、交代制の勤務で作業の必要上部屋を提供した場合などは、事業の遂行上のやむを得ない住宅の提供なので給与課税はされません。

永年勤続記念品等

永年勤続者に対する表彰は一般的に行われています。

この場合に記念品などを支給することもありますが、原則としては給与となってしまいます。

 

しかし次の要件に該当する場合は給与課税しないことになっています。

①金銭、金券、商品券、有価証券でないこと

②おおむね10年以上勤続した人であること

③2回以上表彰される場合はおおむね5年以上の間隔が空いていること

④旅行、観劇の招待、記念品の支給で常識的なものであること

⑤記念品などを自由に選択できないこと(多少の選択は問題なし)

 

どの程度が常識的な範囲かは判断が難しいのですが、例えば勤続30年の従業員に対し、夫婦での海外旅行に4泊5日で招待し、その費用が30万円であっても問題のない範囲となるでしょう。

 

ただ総合的に判断する必要があるので、この例が絶対に正しいとまでは言えないので注意が必要です。

 

また旅行券を支給することもできます。

(参考 国税庁ホームページ) 

社員割引

自社の商品や製品を社員に安く販売することも、福利厚生的な観点から行われています。

この場合は次の要件に該当すれば給与とはなりません。

※ただし食事や有価証券は除きます。

 

①原価以上であること(正確には取得価額以上)

②通常の販売価格の70%以上であること

③値引き率に一定の整合性があること(例えば全社員一律や地位により格差があるなど)

④販売数が常識的であること

 

なおタダで商品等を支給した場合は、販売価格が給与となります。 

また、例えば不動産会社が自社所有の住宅を従業員に割引き販売したとしても、多額である場合は一般的に考えてそもそも福利厚生の範囲を超えているので給与課税となってしまいます。

自社施設の利用

社員割引ではなく、サービス業などを経営する事業者が自社の施設やサービスを役員や従業員へ無償で提供した場合も厳密には給与となります。

 

例えば温泉ランドを経営していた場合、従業員がその温泉を無償で利用することです。

しかしその実態を把握するのは困難なため、その経済的利益が多額でない場合、役員だけの利用でない場合にはあえて課税しないことになっています。

社員旅行

社員旅行については、事業者が企画・実施してその費用を負担(参加者から一部徴収してもよい)するものであれば福利厚生費として認められる場合があります。

 

その要件は次の通りとなります。

①4泊5日以内であること(海外旅行は現地での滞在日数)

②全従業員の50%以上が参加すること

③日程表、領収書などの証拠資料を残しておくこと 

 

これは規定にありませんが、一般的に認められるのは年に1回程度の旅行です。

では2回だと必ずダメだとは言い切れませんが、怪しいところです。

 

また一人当たりの金額も事業者負担がおおむね10万円程度が妥当なラインでしょう。

(参考 国税庁ホームページ

 

なお不参加者への金銭支給は参加者への負担分も含めて給与課税されてしまう場合があるので気をつけて下さい。

不参加者へのお土産はちょっとしたものであれば、わざわざ課税されません。

 

個人事業主の分については、監督的な立場として付き添うのであれば認められると考えられます。 

研修旅行

研修旅行については、実態として業務のためのものであれば給与課税されません。

 

しかしプライベートの旅行と疑われないために、研修に関する資料や行動予定表などの証拠資料を残しておく必要があります。

海外渡航費

海外への出張も基本的には国内出張と同様の扱いとなりますが、一般的には観光を兼ねる場合が多いので、出張費等のうちその観光部分は給与扱いとなってしまいます。

 

具体的には業務日数で按分しますが、出張の全日数を

①業務を行った日数

②観光の日数

③往復の日数

④土日、休養等の日数

に区分し、(①+②)のうちに①の占める割合を使用して出張費等を按分します。

 

よって観光部分について金銭等を支給しなければ給与課税はされません。

 

また以下の注意点があります。

a 日数計算は半日単位でもかまいません。

b 明らかに業務に使用した経費は按分する必要がありません。

c 商談、契約のために海外出張した場合は往復交通費を按分する必要はありません。

d 観光の割合が非常に少ないときは、全期間を業務としてかまいません。

e 業務の内容等が分かる資料を残しておく必要があります。

 

その他同業者団体が主催する海外視察等については、海外渡航費通達に取扱いがあります。

レクリエーション費用

忘年会など飲食を主な行為とする費用については、節税(飲食代)をご参照下さい。

 

その他のレクリエーションとしてはボーリング大会、カラオケ大会などがありますが、全従業員が参加対象となっており(一部不参加者がいてもよい)、一般的に行われているものであれば常識の範囲内でその費用は福利厚生費となります。

 

その後の飲食についても一般的なものであれば福利厚生費となります。

 

ただしゴルフ大会は一般的とまでは言えず給与課税される可能性があります。

クラブ・サークル活動

従業員同士でクラブ・サークル活動を行うことは一般的にありますが、ではその活動に対して金銭的な補助をした場合はどうなるのかというと、親睦を図るものであれば基本的に福利厚生費となります。

 

ただし次の注意点を守る必要があります。

①クラブ・サークルへの参加は自由であること

②補助した費用の使い途が明らかになっていること

③補助した費用が個人的な利益にならないこと

 

例えばテニスサークルに対し、ボール代や練習場代、移動の交通費などの補助をしてもかまいませんが、テニスラケットを買い与えてしまうと個人の利益になるので給与となってしまいます。

 

また親睦というより個人の嗜好が強いサークルなどは、その補助費用は給与となります。

貸付金の利子

役員や従業員に金銭の貸付をした場合には、以下の一定の利率によって計算した利息相当額を徴収することになります。

 

もし徴収不足額がある場合には、その金額は給与として課税されることになります。

ただしその徴収不足額が5,000円以下であれば少額不追求の趣旨から課税されないことになっています。

 

(1)銀行からの借入がある場合・・・その借入の利率

(2)(1)以外の場合・・・4.3%

 

その他災害の場合等、臨時的に貸し付けた場合の非課税の取扱いもあります。

ゴルフ会員権等

事業者がゴルフクラブの入会金を負担した場合の取扱いは次の通りとなっています。

ただし前提として私的利用は給与となります。(個人事業主は必要経費不算入)

 

※法人会員には、法人会員制度がないため個人会員として入会した場合を含みます。

 費用

個人会員

(個人事業主) 

 個人会員

(役員・従業員) 

 法人会員

 

 入会金(名義書換料含む)  

 資産  給与   資産

 年会費・ロッカー料等 

 交際費(事業供用分)  給与  交際費
 プレー費用  交際費    

個人事業で接待ゴルフを行った場合は、個人的な利用であると疑われる可能性が高いので注意が必要です。

ロータリークラブ・ライオンズクラブ

ロータリークラブ・ライオンズクラブへの入会金、会費等は通常は交際費となります。

しかし役員の個人的な利用とされてしまうと給与課税となってしまいます。

 

なお不公平かもしれませんが、個人事業で加入しても必要経費として認められません。

よって経費に計上できるのは中小企業のみとなります。

社交団体の入会金等

ゴルフクラブ、レジャークラブ、ロータリークラブ、ライオンズクラブ以外の社交団体に、業務上必要があるために入会した場合の入会金、会費等は交際費となります。

 

個人事業であっても業務との関連性が強ければ必要経費になると思われます。

ただ社会奉仕やボランティア的な活動を行う団体であれば認められないでしょう。

通勤手当

通勤手当は以下の限度額までの支給であれば給与とはなりません。(月額)

 

(1)公共交通機関で通勤する場合(最短経路等による定期券等)・・・1ヶ月10万円

  (新幹線等のグリーン料金部分は給与となります。)

 

(2)自動車や自転車で通勤する場合

 

 ①片道55km以上・・・31,600円

 ②片道55km未満・・・28,000円

 ③片道45km未満・・・24,500円

 ④片道45km未満・・・24,400円

 ⑤片道35km未満・・・18,700円

 ⑥片道25km未満・・・12,900円

 ⑦片道15km未満・・・7,100円

 ⑧片道2km以上10km未満・・・4,200円

 

 またこの場合の距離は実際に通勤する道路の移動距離です。

 距離を測定できるサイトで計測した距離でかまいません。

 

(3)(1)と(2)の両方に該当する場合・・・(1)+(2)で10万円以下

  (例えば自宅から駅までは自転車、駅から会社までは電車の場合等)

 

(4)片道2km未満の場合、片道2km以上で徒歩通勤の場合

  ・・・限度額はありません。

  (通勤手当の支給は全額給与となります。)

駐車場代

マイカー通勤者に駐車場を借りて提供した場合は基本的に給与となります。

ただし会社の所有地の一部を利用させる場合はわざわざ給与課税されません。

 

また駐車場を複数借りていて、営業車を駐車させたりお客様が利用されたり、利用者が特定されていない駐車場を利用させたのであれば給与とはならない可能性もあります。

車両の借上げ料

場合によっては役員や従業員の車を使用するケースもあります。

この場合の使用料はガソリン代、駐車場代等の範囲であれば特に給与課税されることはありません。

 

また多少の使用料の上乗せがあっても、減価償却費や保険料相当額の範囲内であれば課税になることはありません。(本人は雑所得となります。)

 

ただしその使用の明細について、業務資料などを残しておく必要があります。

制服等

職務の性質上着用する必要がある制服や作業服等を支給した場合は、給与課税とはなりません。

この場合の考え方は「仕事でのみ着られる」という視点です。

 

よってそのまま外出しても不自然でないデザインの被服などは給与扱いとなってしまいます。

スーツの支給も給与となります。

またネクタイ、靴下、靴などの見回品も同様です。

福利厚生施設

保養所や別荘などの福利厚生施設を所有し、無償又は低額で役員や従業員に利用させた場合であっても、次の要件に該当すれば給与課税はされません。

 

①利用者が受ける(経済的)利益が著しく多額でないこと

②全従業員が利用できること

③利用の状況を記録しておくこと

 

また会員制のスポーツクラブやレジャークラブなどの福利厚生施設に事業者(一般的には法人会員)として入会した場合でも、役員の私的利用などでなければ同様の取扱いとなります。

なお入会金は資産計上します。

健康診断費用

事業者が定期的に実施している健康診断等の費用は、次の要件を満たせば給与課税されません。

 

①全社員を対象としていること(労働安全衛生法による健康診断以外のものは、例えば40才以上で希望者を対象とする方法などでもかまいませんが、役員のみを対象とする場合は給与となります。)

②検診内容も一般的なもので、その費用も常識的なものであること

 (PET検診などは高額であると考えられ、給与となる可能性が高いです。)

③検診料を事業者が直接支払っていること

④税務上の要件とまでは言えませんが、法定健診では健康診断個人票の作成等の義務があります

日当

外出や出張の際に日当を支給することも一般的に行われています。

 

この場合は整合性のある旅費交通費規程などの内部規定が整備されており、同規模の他社と比較しても一般的な金額であれば、昼食等の実費を上回る金額を支給しても給与課税されません。

 

また交通費や宿泊費は実費精算が基本ですが、これらの費用についても規程に基いて支給しても妥当な金額であれば給与課税されません。

 

なお日当についてその支給基準に決まりなどはありませんが、国家公務員等の旅費に関する法律に規程されている日当が参考にされることもあります。

 

別表第一 内国旅行の旅費(単位:円)

区分

 日当(1日分)

 宿泊料(1夜分)

 甲地方   乙地方

 内閣総理大臣等

 内閣総理大臣及び最高裁判所長官  3,800  19,100  17,200
 その他の者  3,300  16,500   14,900 
 指定職の職務にある者   3,000  14,800   13,300 
 七級以上の職務にある者    2,600  13,100   11,800 
 六級以下三級以上の職務にある者   2,200  10,900   9,800 
 二級以下の職務にある者    1,700   8,700    7,800 

※甲地方:東京都、大阪市、名古屋市、横浜市、京都市、神戸市のうち一定の地域

 乙地方:甲地方以外の地域

 

ただし午前中のみ、午後のみ、といった外出であればこの金額のおよそ半分程度が妥当と考えられます。

慶弔費

結婚や出産、香典などの慶弔費を支給した場合でも、一般的な金額であれば給与課税されません。

できれば慶弔規程などを設けてルール化しておく方が望ましいです。

 

ではいくらなら課税されないのかという基準はありませんが、以下に一つの例として問題がないと考えられる金額を示しておきます。

 

(1)結婚・・・5万円の祝金

(2)子の誕生・・・1万円の祝金

(3)災害を受けた場合・・・程度に応じて10万円以内の見舞金

(4)配偶者又は一親等内の親族が死亡した場合・・・5万円の弔慰金

(5)傷病により一週間以上入院した場合・・・3万円の見舞金

資格取得、セミナー費用

業務に必要な技術や知識を習得するための資格取得、研修会、講習などにかかった費用については、事業者がこれを負担しても給与課税はされません。

 

ただし常識的な金額であり、本当に業務上必要があるのかを明らかにできるようにしておく必要があります。