事業者が考えるべき生命保険の基本

節税にもなるという理由で生命保険を契約する事業者の方は多くいらっしゃいます。

しかし本当にそれでいいのでしょうか。

また保険について誤解があるのではないでしょうか。

多くの社長さんからいろいろな話しを聞いているとそのような疑問を持つことがあります。

そこでまずは生命保険加入の判断について初歩的なことに触れてみたいと思います。

 

(1)保険の本質

そもそも保険とはどういうものでしょうか。

もちろん万が一(病気や死亡などの事故)のときにお金が受け取れる、ということは誰でも知っていることです。

 

しかしそれだけでは本質が見えてきません。

はっきり言ってしまえば、保険とは「マネーゲーム」なのです。

だから自分がどういうゲームに参加しているのかを知っておく必要があります。

 

野球でもサッカーでも世界共通のルールがあります。

だから誰でもルールで迷うことはありません。

 

それに対して保険とは保険会社との「保険商品」に関する契約です。

どういう商品なのかは様々なタイプがあるのです。

 

ここを理解せずに一般論だけで、又は保険の担当者を信用して契約してしまうことがよく見受けられます。

 

結果として損をしてしまう、又は損をしていることにさえ気づかないケースが多いのではないかと思います。


(2)ゲームのからくり

それでは一体マネーゲームとはどういうことでしょうか。

 

まず保険には単純な掛け捨てタイプがあります。

また積立タイプもあります。

こちらは途中で解約してもある程度積み立てたお金が戻ってきます。

 

そこでここからが問題ですが、この2つを組み合わせた途端、多くの方は思考が停止してしまうのです。

よくあるのが特約と言われるものです。

保障の金額が大きくなります、と言って加入させようとするのは常套手段でしょうか。

 

さらに露骨に掛け捨てと積立タイプのものを組み合わせた保険商品もあります。

ただそこに安心できるような絶妙なネーミングを付けてCMを流せば、もう掛け捨て部分と積立部分を区分して考えることはしなくなってしまうのです。

中には実態として掛け金のほとんどが掛け捨てになっているものもあります。

 

これだけのことで、保険に加入しようとしている人はよく実態が分からなくなって思考が停止してしまうのです。

すでにゲームに巻きこまれて不利な戦いを強いられていることに気付かないのです。

 

保険会社にしてみれば、掛け捨ての保険が多く売れれば儲けが増えます。

何しろ事故がなければ全額が収入になるわけですから。

もちろんそこは様々な統計など高度な金融工学を駆使して、トータルでは自分達は絶対に損をしない設計にしています。

 

ちなみに積立タイプの保険では、その積立てられた保険料は運用して増やす必要があるので大変です。

手っ取り早く収入になるのは掛け捨てということになります。


多くの方は掛け捨てはもったいないからと、積立タイプを希望します。

でもそれだけでは利益が少なくなるので、何とかして、分かりにくくさせて掛け捨てタイプに加入させようとするのが保険会社なのです。

 

言われてみれば大したことのないように思えますが、これがゲームの実態ということになります。

本当に掛け捨て保険を望んでいれば問題はないのですが、知らないうちに望まない掛け捨て保険に加入させられていれば、もう負けゲームです。

 

何しろ通常、人間は死なないように一生懸命生きるからです。

つまり皮肉なことに保険会社が勝つように毎日頑張って生きているのです。

その辺りはもう一度考え直してみてもいいのではないでしょうか。

 

(3)もう一つの判断基準

保険というゲームを考える上で、もう一つ考えるべき要素があります。

それは「時間」です。

 

積立タイプのものは確かに掛け金が戻ってきますが、長期間預けていれば保険会社も長期的に運用ができます。

よって基本的には多めの運用益を含めて戻ってきたり、保険金が受け取れたりします。

 

逆にすぐ解約されてしまう可能性があるものは、安定して長期的に運用できるか分からないため、もらえる運用益も少ないでしょう。

 

具体的には解約返戻率を見れば分かります。

数年で解約返戻率が100%になるもの(全額返金されるもの)は、それほど運用益がもらえないことが一般的です。

 

その反対に「低解約返戻金型」と呼ばれるものは、多くの運用益がもらえることになります。

なかなか解約返戻率が100%にならないので、数年で解約してしまうと大きく損してしまいます。

なお実際には運用益という言い方ではなく、保険料が安くなっているという扱いになっています。

 

要するに定期預金と同じで、長期のものは多くの利息が付くという仕組みと似ています。

ただ保険の場合は若くして亡くなってしまっても(それまでの掛け金が少なくても)、契約した金額が受け取れるので、定期預金よりはるかにお得な金融商品であるとは言えます。

 

この「時間」の概念が含まれた保険については、どちらが勝つというより、自分はどうしたいのか、ということを考えた方がいいと思います。

 

確かに長期で考えれば低解約返戻金型がお得ですが、解約に不自由さがあります。

特に事業資金で保険料を払う場合は要注意です。

何しろ事業では「今」お金があることが最も必要とされるからです。

 

いずれにしても、自分で知識を得て判断することが大切ではないでしょうか。

 

(4)保険屋

保険を売る人は、多くの場合保険会社の担当者、外交員、保険代理店(保険ショップ)ということになるでしょう。

 

しかしここにも大きな落とし穴があります。

やはり人間相手、しかも自分より知識がある人が相手であると、途端に思考停止してしまうのが日本人の特徴とも言えます。

 

まず彼らは保険会社のこと、もっと極端に言えば自分のことしか考えていません。

と言うと語弊があるかもしれませんが、売った保険に対して手数料などの特典があるのです。

 

そうであれば、手数料の大きい保険を売ろうと考えるのが当然です。

一度大きい手数料を得てしまうと、その快感は手放せません。

中には感覚が狂ってる人もいるかもしれません。

 

はじめから手数料が大きい保険を売ることを前提に話しを持ちかけられているのです。

また会社が売ることをプッシュしている保険もあるでしょう。

 

一番いいのは自分で勉強して、はじめからこういう条件の保険に入る、と決めてから話しに入ればいいのです。

又は独立したファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。

その人を通して保険契約を締結しない条件で相談に応じてもらえば、利害関係はありませんから、純粋に自分に合った保険の説明をしてもらえるはずです。

 

ただ困ったことに、担当者の人柄がいいのできっと大丈夫です、というお考えの社長さんも多くいらっしゃいます。

この場合は、その人は会社から都合がいいことしか聞かされていないかもしれない、と思うようにして冷静さを保つようにすることが大切です。

 

 

以上保険の中身には触れず前提的なことしか述べませんでしたが、これらのことが分かってはじめて保険選びに進むことができます。

まとめると、

・保険商品の中身をよく知る

・保険を売る人を信用していはいけない

ということになります。

 

今の時代は、住宅の購入も同じですが、自分で勉強することも必要です。

何でも人任せ、ではいつか自分とその家族が困ることになるかもしれません。


実際の保険の節税などのお話しは別の機会に説明する予定です。