知らないと後で怖い役員の給料

会社を設立すると、社長をはじめ役員の方も従業員と同じように会社から給料を受け取ることになります。

しかし自分で作った会社であれば、給料はいくらでもコントロールが可能です。
もちろん利益操作も自在にできてしまいます。

そこで税法ではそのような行為に歯止めを設けています。
真面目に運営している会社とやりたい放題の会社に差をつけないと不公平だからです。
それでは早速その具体的な内容を見ていきましょう。

1 儲かってきたから給料を上げたい

はじめは給料(役員報酬)を30万円にしていました。
しかし予想より業績がよく、期の途中から50万円に変更したい。

このように考えられる社長さんは多くいらっしゃいます。
ただ結論から言えば、支払うのは自由ですが経費(損金)になるのは、あくまでも30万円までとなります。

ここがポイントですが、役員報酬は毎月一定の金額しか認められません。
もし途中で増額しても、その分は経費にならないことになります。

国の考えとしては、これを認めると役員が給料を限度まで引き上げて、会社の利益を0にしてしまう可能性がある、ということなのです。

利益が0であれば、基本的には法人税も0です。
そうなると所得税と法人税のバランスがとれなくなります。

税金を上げようと思ったら、個人に係る所得税を上げるしかなくなってきます。
会社からは一切税金を取らず、サラリーマンに重い税を課すのは現実的ではありません。
それでは国家財政上不都合なので、利益調整を防止しているのです。

2 面倒なボーナスの支給

だったらボーナスを支給して取ってやろう、と考えるかもしれません。
でもこれも同じ理屈で、いきなりボーナス500万円支給しました、全額経費になりました、では1の規定の意味がなくなってしまいます。

結論から言えば、ボーナスは事前に税務署への届出が必要です。
そこで金額と日付を宣言しておき、実際にその通りに支給した場合のみ、認めています。

ですから従業員のボーナスに比べるとハードルが高くなっています。

3 妻を使えばいい?

とっておきの方法を思いつきました、儲かってきたので妻の給料を上げようと思います。
これで利益調整を図ればいいのではないでしょうか。

そのように思われる方も多いかもしれません。
しかし基本的に、妻は実を言うと役員扱いされてしまうことが多いのです。

これをみなし役員と言いますが、経営に参加していれば役員と同じ扱いにされてしまいます。
これは実際の税務調査で揉める可能性もありますが、通常は夫婦で仕事の話しをすることは当然のことです。
妻が給料をもらっているのであればなおさらなので、役員扱いとされてしまいます。

ですが経営には全く関係ないと主張できる何かしらの根拠があれば役員扱いにはならない可能性もあります。

しかし規制はまだあります。
役員扱いでなくても特殊関係使用人という扱いがまだ残っているのです。

要するに身内に特別な給料の出し方をしていると、全額が認められるわけではないというルールです。

もっとも金額に具体的な基準があるわけではないので不透明な部分もありますが、野放しに何をやってもいいということにはなっていないのです。

4 息子を使えばいい?

息子は使用人兼務役員(例 役員かつ営業部長など)ということで、従業員の身分もあるため、その辺りで何か利益操作できないか、と思うかもしれません。

確かに使用人兼務役員であれば、従業員の立場については役員の扱いにはなりません。
しかしその息子さんがその会社一定の株式を所有していると、実は使用人兼務役員の扱いにはならなくなってしまいます。
この場合では役員と同じ扱いになります。

ここにも規制があるので注意が必要です。
また株式を持っていなくても、結局従業員の立場については特殊関係使用人の扱いがあるので、ここにも気を付ける必要があります。

5 隠れ給料にご注意

例えば社長のプライベートのゴルフプレー代を会社の経費にしていたとします。
もしこれが税務調査で見つかると、社長の給与所得とされてしまいますが、税務的には3つの修正が生じてきます。

まず法人税では、1で触れた通り役員の給料は毎月一定でなければなりません。
よって給料とされた部分は、毎月一定の金額を超えているので、その金額は認められません。
これは法人税の計算に影響がでてきます。

ただしこれが一般従業員であれば、本人には所得税などがかかりますが、給料という経費にはなります。

次に社長本人の所得税、住民税も当然かかってきます。
ここは常識でも理解できるのではないでしょうか。

最後は消費税です。
通常ゴルフプレー代は消費税がかかりますが、これは納めるべき売上の消費税から控除することができます。

しかしこれが給料とされてしまうと、給料は消費税がかからない取引ですから、その控除が認められなくなってしまうのです。

よって経費が給料として認定されてしまうと3つの追加の課税を受けることになってしまいます。
少額ならまだいいのですが、これを3~5年分で、しかも多額のものが発見されてしまうと大変なことになります。

後で取り返しがつかないことになるので、このような隠れ給料に注意する必要があります。
また自分では経費と思っていても、税務調査で給料とされてしまうこともありますので、やはり税理士の指導を受けることが大切です。

6 改定できる場合

ではどのような場合に給料が変更できるのでしょうか。
まずは定時株主総会です。
これは会社法でも決められていますが、この時に給料(報酬)の改定をすれば、税務でも認められます。

その他には業績悪化により銀行からリストラを要請された場合や、今まで平の役員だった人が社長に昇格した場合など、特別な事情がある場合は変更が認められています。

またこれは裏技とまではいきませんが、思い切って事業年度を変更してしまう方法もあります。
事業年度を変更すれば、すぐに決算となり、その後に株主総会をしなければなりません。
そこで給料(報酬)を変えれば、税務的には問題ないのです。

もっとも頻繁に事業年度を変更することは通常有り得ないので、いざというときの方法と考えておく方がいいでしょう。

以上役員の給料(報酬)について見てきましたが、かなりルールで縛られているので、税理士と相談しながら運営していくことが大切なのではないかと思います。

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